妊娠・出産 情報百科

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妊娠中の貧血予防

妊婦中の血液検査で貧血と診断されると、鉄剤が処方されますが、処方薬は鉄の含有量が多いこともあって服用しにくく、胃腸の不快症状や便秘の原因になることがあります。

妊娠中に、貧血は進行しますが、できれば処方薬は服用しなくてもすむように、つわり症状が落ち着いた妊娠5ヶ月頃から、食事やサプリメントで鉄分を摂取して予防しましょう。

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貧血の指標となるヘモグロビンは、鉄とタンパク質からできており、減少する原因としては、

  1. ヘモグロビンの材料である鉄分の不足
  2. ヘモグロビンを作る際に必要な葉酸、ビタミンB12などの不足
  3. 血液の病気、慢性疾患(腎不全ほか)など造血機能の問題

などがあります。妊娠中の貧血は、ほとんどが鉄欠乏性貧血なので、妊娠中の貧血予防といえば鉄分補給です。

 

参考) 

貧血改善の薬剤には、増血剤と造血剤があり、いずれも読みは”ぞうけつざい”ですが、少しニュアンスは異なります。

  • 増血剤:造血機能問題がなく原料となる鉄分を補充し貧血を改善させる薬。
  • 造血剤:造血機能に問題がある病気を治療する。造血機能の病気には多くの種類があり、原因によって治療薬も異なります。通常、妊娠中に使用することはありません。

貧血予防の実際

以前は、妊婦向けの料理教室が開かれ、レバーやほうれん草が苦手な人に、さまざまな調理方法が紹介されていましたが、現在はあまり行われていません。確かに、家庭料理として、家族が毎日少しずつ鉄分を摂取することは大事ですが、実は、妊娠中の鉄分の需要増加を補うには食事だけでは不十分なのです。

私たちの身体の中には34gの鉄分がありますが、血液中のヘモグロビンに約2g、残りの1~2gは肝臓や脾臓に貯蔵鉄として存在します。貯蔵鉄が少ない人は早くからヘモグロビン値が低下します。

通常、一日の食事で摂取する鉄は1020mgで、腸から吸収されるのはその約10%、12mg程度しかなく、妊娠期間中の食事だけでは、鉄分は不足します。

 

ヘム鉄と非ヘム鉄

食事中の鉄分には、血液や筋肉に含まれるヘム鉄と、野菜に含まれる非ヘム鉄があります。

  • ヘム鉄 :動物の筋肉(食肉、魚、貝)、肝臓、ヘム鉄サプリメント

 腸の粘膜には、ヘム鉄を吸収するためのレセプターがあり、腸で吸収しやすい。

  • 非ヘム鉄:野菜(ほうれん草、小松菜、他)、処方薬の鉄剤

 非ヘム鉄は水に不溶性で、そのままでは腸から吸収されず、腸に負担がかかる。

いずれも鉄の吸収率は低いとはいえ、ヘム鉄は非ヘム鉄よりも吸収されやすく、胃腸にも負担が少ないので、貧血予防にはヘム鉄の摂取が効率的です。

もし、非ヘム鉄の野菜から鉄必要量を摂取しようとすれば、繁殖期の鹿や山羊が一日中草を食べるように、野菜を、一日中、むしゃむしゃと食べる必要があります。精進料理を食べる僧侶や菜食主義者の方々は、長年の食習慣で身体システムが慣れていますが、鉄欠乏性貧血になりやすい傾向があります。

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妊娠中の貧血予防のために最も有効なのは、ヘム鉄サプリメントです。サプリメントというと抵抗があるかもしれませんが、かつて、料理教室で紹介されていた、〝レバーふりかけ“ などの作りおき食品を利用するよりも、はるかに安全で効率的です。

現在、DHCディアナチュラなどから販売されているヘム鉄には、造血機能を助ける葉酸ビタミンB12も適量入っていてお勧めです。ドラッグ・ストアやアマゾンで1ヶ月分が5001000円で手に入ります。妊婦向けショップやネット販売にあるような高額なものである必要はありません。

妊娠・授乳期間中に、ヘム鉄の一日目安量を飲み続けて鉄過剰となることはありませんが、もし、妊娠中の血液検査で、血液が濃すぎる、血液中の鉄が多すぎると指摘されるようなことがあれば、その時点で中止すれば問題ありません。

鉄分を摂取するために、緑茶は避けるように指導された時代もありますが、今は関係ないとされています。

貧血治療が必要な方へ

治療が必要な貧血と診断された方は、食事やサプリメントによる貧血予防では不十分な段階ということです。貧血改善には時間がかかるので、指示通りの服用を心がけましょう。どうしても無理な方は、鉄欠乏性貧血治療の注射剤を使用することもあります。