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妊娠とGBS(B群溶血性連鎖球菌)

妊娠35週以降の妊婦健診で、腟・肛門周囲の細菌検査<GBS検査>を行います。その目的と意義について解説

  •  GBS(B群溶血性連鎖球菌)とは?
  •  新生児GBS感染症のリスク
  •  新生児GBS感染の予防法

GBS Pregnancy Neonate

7月は国際GBS(B群溶血性連鎖球菌)啓発月間です。


 

 GBS(B群溶血性連鎖球菌)とは?

GBS(group B streptococcus:B群溶血性連鎖球菌)は、消化管や腟周囲の常在菌の1種類で、妊婦の10~25%が保菌しています。それ以外の方、他の種類の常在菌を保有しています。通常、常在菌は皮膚や粘膜で共存し、病気起こしません。むしろ、常在菌集団は、感染予防のために必要なものと考えられています。

妊婦健診で陽性と判明しても、過度に心配する必要はありませんが、新生児感染症の予防は重要です。

 

 新生児GBS感染症のリスク

子宮内は無菌状態なので、胎児は生まれて初めて、外界の細菌に接触します。免疫システムが未熟で、常在菌集団を持たない新生児、初対面でこのGBSに接すると相性が悪く、頻度は低いものの、重症の新生児GBS感染をおこすことがあります。

新生児GBS感染症で、髄膜炎、肺炎、敗血症(血液中で細菌が増殖)などを発症してしまうと、生命の危険、後遺症を引き起こす可能性があります。

妊婦の約20%が保菌し、その母親から生まれた新生児の約1%がGBS感染症になります。残りの99%は菌に接触しても発症しませんが、もし予防対策をしければ、新生児の約2000人に1人が発症する可能性があるということです

 

 新生児GBS感染症の予防

GBSを保菌する妊婦を、早い時期に見つけて治療すれば? と思うかもしれませんが、そこが常在菌の難しいところです。常在菌は神出鬼没で、持続的、周期的、突発的に出現するので、一旦消えても大丈夫ではありません。何度も抗生剤治療をすれば、抗生剤が効かない耐性菌が増えるリスクもあります。

現在のところ、妊娠35~37週に、腟肛門周囲にGBSを保菌しているかどうかの検査を行い、陽性の場合、分娩時に抗生剤投与で予防するのが、最も有効と考えられています。実際の投与方法は、施設によって異なりますが、4時間ごとの点滴注射が一般的です。

これは母親の治療ではなく、分娩時に母親に投与することで、薬剤が胎児に移行し、胎児がそれを保持しながら産道を通過する、つまり、新生児への予防投与ということです。

GBSの保菌が不明の場合、早産(37週未満の分娩)、破水後18時間以上、以前の出産で新生児GBS感染の経験がある、母体発熱38.0℃以上などは予防投与の対象です。陣痛発来前、破水前の予定帝王切開の場合には予防投与は必要ありません。

アメリの報告では、このような予防手順が普及して、新生児GBS感染症が約10分の1に減少したとされています(米国疾病管理センター)。しかし、予防対策しても、ごくわずかの発症は避けられません。